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診断基準

本セクションでは、国際心肺移植学会(International Society for Heart and Lung Transplantation;ISHLT) により提唱されている急性細胞性拒絶反応の組織学的診断基準(改訂版)を解説する。

概論

 

1990年、心内膜心筋生検に基づく急性細胞性拒絶反応(acute cellular rejection; ACR)の診断基準が国際心肺移植学会により提唱された。その後この診断基準は2004年に改訂されISHLT-2004、grading は0R、1R、2R、3R の4段階となった。“R”はrevisedを意味し、ISHLT-1990の診断基準(0、1A、1B、2、3A、3B、4)と混同しないよう記載されている。多くの施設ではgrade 0Rや1Rは治療の対照とならず、grade 2Rまたは3Rの拒絶反応に対して免疫抑制剤の増量が行われる。従って、grade 2Rまたは3Rに相当するhigh gradeの病変とlow grade(0Rまたは1R)の病変との鑑別が、病理医の重要な任務となる。

ISHLT2004 scheme

ACRの診断において、リンパ球浸潤および心筋細胞障害の2つが重要な所見である。生検標本には、拒絶反応と紛らわしい所見やアーチファクト、拒絶反応の診断の手がかりとなる所見、他疾患の存在を示唆する所見等、様々な組織像が観察される場合も多いが、生検による拒絶反応の診断は、あくまでも「リンパ球浸潤」と「心筋細胞障害」の2つの所見だけに基づくものであるという認識が重要である。

拒絶反応なし(0R)

 

生検標本にリンパ球浸潤が認められない場合、細胞性拒絶反応がないと判断され、grade 0Rと診断される。原則的に、検体にはほとんど組織学的変化は認められないが、Quilty効果以前の生検による反応性変化等、拒絶反応とは関係のない所見が検体の一部に認められる場合もある。これらは拒絶反応のグレード判定には含まれず、別個に記載する。

Grade 0R Grade 0R Grade 0R

軽度拒絶反応(1R)

 

Grade 1Rは、間質あるいは血管周囲へのリンパ球浸潤を認め、かつ心筋細胞障害が局在性(一箇所まで)のものと定義される。この基準は多様なパターンかつ様々な程度のリンパ球浸潤を含むため、生検標本の多くはこの範疇に属する。リンパ球浸潤の程度は、血管周囲にごく少数のリンパ球が認められるものから、広範囲に浸潤が認められるケースまで様々であり、grade2Rと同程度の炎症が認められる場合もあるが、心筋細胞障害がただ一箇所のみであるならばgrade1Rと診断される。通常、grade 1Rの標本に好酸球や好中球は認められない。生検標本上に認められる心筋細胞障害が一箇所だけの場合、採取検体の問題による過小評価の可能性や Quilty 効果 の一部である可能性を考慮する必要があり、その診断は非常に困難となる。このため、Grade 1Rの基準を満たす生検標本にリンパ球の密な集族や局在性の心筋細胞障害が認められた場合には、その旨を臨床医へ報告することが望ましい。

Grade 1R Grade 1R Grade 1R Grade 1R Grade 1R Grade 1R Grade 1R Grade 1R Grade 1R Grade 1R

中等度拒絶反応(2R )

 

炎症細胞浸潤巣の2箇所以上が心筋細胞障害を伴っている場合、grade2Rと診断される。その異なった浸潤巣は、同一の、または複数の標本において認められるが、異なる深さの薄切面において認められる場合もある。一般的に、心筋細胞障害が2箇所以上認められるケースには、少なくとも中等度以上のリンパ球浸潤が標本全体に認められる場合が多い。逆に、びまん性の炎症細胞浸潤巣が存在しない場合、心筋細胞障害を過大評価している可能性を考慮すべきであり、拒絶反応と紛らわしい病変 との鑑別が必要となる。生検でgrade2R以上の拒絶反応が認められた場合、治療が速やかに開始されるよう、臨床医へ直接結果を報告することが望ましい。

Grade 2R Grade 2R Grade 2R

重度拒絶反応(3R )

 

Grade3Rはびまん性の心筋細胞障害を呈し、各々の心筋細胞障害を区別するのは困難である。多数の好酸球や好中球を含む、非常に高度の炎症細胞浸潤が標本全体に認められ、浮腫や出血、血管炎が観察される場合もある。現在の治療プロトコールではgrade 3Rの拒絶反応が生じることは非常に稀であるため、grade3Rが認められた場合には、患者が内服薬を自己中止した可能性が最も高い。通常grade3Rの拒絶反応は心機能の低下を伴うため、迅速に治療が開始されるよう、生検結果を臨床医へ直接報告することが推奨される。

Grade 3R Grade 3R Grade 3R

抗体関連拒絶反応

 

抗体関連拒絶反応(Antibody mediated rejection;AMR、またはhumoral rejection)はACRとは別の拒絶反応である。ただし重度のAMRの場合、組織学的所見がACRと重複する場合もある。光学顕微鏡では、毛細血管内皮細胞の腫大、血管内のマクロファージの集族、間質の浮腫が認められるが、一般的には補体C4dの染色もAMRの検索に併用される。AMRに焦点を絞った別のチュートリアルは、間もなく閲覧可能となる予定である。

1990年基準と2004年基準における相違点

 

前述のように、ISHLTは過去に2種類の診断基準を提唱している。臨床的予後に違いがないと報告されている1Aと1B 、3Bと4 (1990年基準)は、2004年基準では簡素化され、それぞれ同一グレードにまとめられた。最も議論を呼んだ変更点は、1990年基準のgrade 2(局在性の心筋細胞障害あり)が2004年基準の1 Rに加えられたことである。何故なら、grade 2(1990年基準)とgrade 1R(2004年基準)の症例に対して、免疫抑制剤の増量あるいは経過観察のどちらを治療法として選択するかという点が、各移植施設により異なるためである。従って、生検標本に心筋細胞障害をただ一箇所に認めた場合、直ちに臨床医へ報告すべきか否かの判断は、各施設に委ねられる。

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